学生の皆様へFOR STUDENTS

 気体流の希薄度を表わす重要な無次元パラメータとしてクヌッセン数(Kn : Knudsen number)があり、平均自由行程と流れ場の代表長さL を用いてKn =□/Lで定義されます。一般にKnが0.01を超えると、気体流は連続体として近似できず、原子・分子の流れとして扱わなくてはなりません。高真空を利用する半導体薄膜製造や宇宙空間などの平均自由行程が大きい場での製品開発はもちろんのこと、大気圧下でも代表長さが数十nm程度になるMEMSやNEMS(Micro/ Nano Electro Mechanical Systems)に代表されるナノ・マイクロデバイス近傍の流れ場も、高クヌッセン数流れとなります。高クヌッセン数流れにおいては、平均自由行程が大きい場合には分子間衝突数が極端に減少して気体流中に強い非平衡現象が発現し、代表長さが極端に小さい場合には気体分子は他の気体分子よりも固体表面と数多く衝突するため、流れ場が固体表面の影響を強く受けることになります。 いわゆるナノテクノロジーにおいては、デバイスの構築・形成に重点が置かれていますが、これらは作動時においては常に雰囲気ガスと接触しているために、気体分子とデバイスとの相互作用が非常に重要であるにもかかわらず、そこには力点が置かれていないのが現状です。

 今後のMEMS/NEMSなどのナノ・マイクロデバイスの開発には、これらを取り巻く高クヌッセン数流れの理解、すなわち流れ場の原子・分子オーダーでの理解と固体表面近傍における原子・分子の挙動の理解が必要です。ナノ・マイクロ領域では、マクロ領域では問題ならない特異な物理現象が発現するため、これらの理解の積み重ねがナノテクノロジーの将来を決める今後の大きな課題であり、高クヌッセン数流れに関連した高精度な実験手法の開発とその実験的な精緻データの取得がナノテクノロジーの進展に大きく寄与するものと思われます。特に、固体表面の適応係数、吸着確率、気体流の非平衡現象などの高クヌッセン数流れを理解するのに必要な基礎データは、1960年代から進展しておらず、これらのデータの取得は急務の課題で、これらの実験データの取得は、高クヌッセン数流れの詳細な予測の可能性にも結びつくと考えられます。

 高クヌッセン数流れは低レイノルズ数(Re)流れまたは高マッハ数(Ma)流れにも対応し、これらの流れ場は同様に連続体近似が成立せず、原子・分子の流れとして扱う必要があります。近年話題となっている手の平サイズの小型飛行機や火星などの低密度大気中で飛翔する飛行機などでも、高クヌッセン数流れの解明が必要となります。本研究では、高クヌッセン数流れの総合的解明を目指して、代表的には以下のような実験的研究を推進しています。

 名古屋を一望する緑あふれる東山の地で、みなさんと自由闊達に意見を交わし、世界に向けて研究成果を発信できる日を楽しみにしています。

  • レーザーを用いた原子・分子流れの解析
    レーザー誘起蛍光法(LIF)、共鳴多光子イオン化法(REMPI)
  • 固体表面の適応係数の計測
  • 感圧塗料(PSP)の開発と高ヌッセン数流れへの適用
    感圧分子膜の開発、ドット配列による感圧/感温塗料(PSP/TSP)の複合化