研究グループからのメッセージ

社会は、利便性の追求に偏りがちであったこれまでの発展形態を省み、持続性をより高い価値観として環境と調和して発展する道を模索しつつあります。 わたしたち機械工学を学び、志して行こうとしている者にとっても、この社会的変革は、大きな意味をもち、機械文明の発展のあり方に再考を促しています。 しかしながらわたしたちは、自動車をはじめとした機械や自動化技術からすでに多大な恩恵を蒙り、それらと半ば共生化している現状にあり、今後もこの営みは延々と続けられることでしょう。

「持続性の裏付けられた発展を目指す社会の機械との共生」、これは大変難しい問題であります。言うまでもなく、機械文明は現在まで、人類社会に多大な利益をもたらしてきました。しかし一方で、環境・エネルギー問題のみならず、人間の日々の営みの諸相に心身の危害をもたらす存在になりつつあります。たとえば、情報技術に駆動される社会のスピード化は、個々人に大きな負担とストレスを与え、機械による自動化は、人間の運動不足やあるいはさらに健全な思考の阻害をもたらしかねません。さらに、わが国の超高齢化は、たとえば医療福祉分野において労働力不足を補い得る革新的な機械・情報システムの開発・出現を渇望していますが、同時にこれらには、高い安全性や人への知的親和性が要求されることがわかってきました。

このような社会的背景の下、わたしたちは機械工学のあり方を変えたいと願い、2008年から新たに「安全知能学」研究グループを命名し、立ち上げました。 その設立趣旨は、従来、期待されながら実用化に至らなかった機械システムを社会に送り出し根付かせるところにあり、「安全」と「知能」の2つの概念※を統合して、人間の安心を生む、安全性と利便性を同時に満たす機械システムをつくりだそうと考えています。

わたしたちは、「真に社会に役立つ人間支援機械を構築する」を目指し、研究グループ活動を展開しています。 わたしたちは、RT(Robot Technology)を駆使して、生産現場や福祉現場の安全性確保を目的とした安全知能機械の実現に向けて研究することにしています。 研究者や研究開発者を目指す学生のミッションは、現場に赴き、リスクとベネフィットのバランスをしっかり理解して機械システムを設計することです。 動的システムの計測制御技術と信号処理技術、生体工学・認知科学的観点における人間の理解とモデリング技術を基盤技術とし、人間支援機械の研究開発を通して、わたしたちは新しい学際分野「安全知能学」を創造して行きます。

※「安全」とは危害を蒙る不安がないことでありますが、専門的には、さらに広く「安全な状態とは、許容できないリスクが存在しない状態である」とされています。 他方、「知能」とは、狭義では「認識、推論、判断、学習、記憶」などの極めて高度な人間の情報処理機能ですが、近年は、人間や動物の行動側面を重視した「外界に能動的に適応する」機能が強調されるようになってきています。 われわれは、まず知的な機械システムを設計してこれを情報化し、やがて機械に搭載していきたいと考えています。